家庭用太陽光発電+蓄電池システムを導入するメリットとデメリット【ペット飼育者向け】
トカゲやカエルなどの変温動物や、ハムスターなど寒さに弱い小動物を飼育する際、パネルヒーターやエアコンで温度管理している飼育者さんも多いのではないでしょうか。
日本は世界的に見ても電力が安定している国で、年間の停電時間は1軒あたり15分程度と言われています。
それでも大規模災害時は1週間程度、地域によっては約1ヶ月停電することもありました。(東日本大震災は6日、能登半島地震は約1ヶ月)
春や秋頃なら比較的気温が高いため、爬虫類の場合は数日程度なら餌を控えておけば耐えられるかもしれませんが、真冬だと沖縄でも15度を下回るので調子を崩す個体が出る可能性があります。
今回は、近年注目されている住宅のエネルギー自給自足に関して、
日本は地震や台風等の災害も多いし、もしもの場合に備えてペットのために太陽光発電と蓄電池を導入しようかな・・・
元々ウチは太陽光パネルを導入していたから売電のおかげで飼育にかかる電気代がチャラみたいなものだったけど、10年経って売電価格が安くなるから大変だわ・・・
といった方向けに、ペットのために家庭用蓄電池システムを導入するメリット・デメリットや、検討するときに気を付けることをまとめてみました。
正直、個人的には”ペットのための”太陽光発電システム導入は微妙だと思うけど、”防災のために”導入するならまだ検討できると思うよ。
家庭用蓄電池システムについて
システムの仕組み
基本的なシステムの構成は以下のとおりです。
(図の簡単化のため分電盤や電力計などは省略しています)
一般的な太陽光発電(単機能パワコン1台構成)
太陽光発電システムは一般的な家庭で太陽光パネルを導入する場合はまず検討される方式です。
太陽光パネルで発電した電力は電力会社に売電でき、停電の際は発電した電力を非常用コンセントから取り出すことができます。
しかし、太陽光発電そのものは家全体の電力を供給するシステムではなく、日常で使用する電力は電力会社から全て購入するため、日々の電気は購入し、売電で得たお金を電気代差し引くて相殺するというのが基本的な考え方です。
仕組み上、太陽が出ている間だけ、しかも非常用コンセントからしか電力を取れないため、別のコンセントで繋がった冷蔵庫やエアコンを1日中稼働させることはできません。
非常の際は晴れた日の日中にケトルでお湯を沸かしたり、モバイルバッテリーに充電して貯めておくことなどができます。
太陽光の届かない曇っている日や夜の時間は役に立たないから、夜の冷え込みからはペットを守ることができなさそうだね。
蓄電池機能のみ(単機能パワコン1台構成)
蓄電機のみの構成は、太陽光発電を取り付けずに蓄電池だけ取り付けた場合のことを示します。
普段は価格の安い深夜電力を蓄電池に貯めておき、それ以外の時間は貯めておいた深夜電力を使って家の中に電力を供給します。
晴れた日中しか電気を使えない太陽光発電式と違い、曇りの日や夜間も蓄電池に貯めていた電力を使うことができます。
また電気を売るのではなく、日中使う電気を深夜電力に置き換えるため、日々の電気代が安くなる効果があります。
停電した場合、節電すれば1〜2日程度なら耐えられますが、深夜電力を貯める前に停電になったり、貯めた電気を使い果たすと役立たずの置物になります。
非常時に普段と同じようにガンガン電力を使うことはないと思うので、2〜3日ぐらいの停電に耐える目的なら一番コスパが良いかも。
太陽光発電+蓄電池機能(ハイブリットパワコン1台 / 単機能パワコン2台構成)
これから停電の対策を行う場合は太陽光発電付き蓄電池システムをオススメされます。
機能としては前に書いた太陽光発電と蓄電池システムの良いところをとった感じで、以下のようなメリットがあります。
太陽光発電付き蓄電池システムは、一般的に普及している技術の中でエネルギーの自給自足を達成できる唯一の方法です。
生活サイクルがうまくハマれば、太陽光パネルで発電した電力だけで電気代0円(基本料金は除く)で過ごすことができます。
停電時は太陽光発電で電力を貯めることができるので、もし停電が長期化しても飼育温度を維持し続けて電力復旧まで耐えられる可能性があります。
また普段使ってて太陽光発電の電力が不足した場合でも、不足した電力だけ電力会社から購入するので、最も電気代を抑えることができます。
一方で停電時の電力供給は太陽光パネルに頼っているため、曇りや雨の日が続いて蓄電池に貯めた電力が空になると使えなくなります。
1週間以上の停電にも耐えられる可能性があるから、防災意識の高い人にはオススメだよ。
太陽光+蓄電池+電気自動車(トライブリッドパワコン1台構成)
トライブリッドのパワコンを使った構成はV2H(Vehicle to Home:自動車から住宅への電力供給)機能を持っている電気自動車をお持ちの方向けのシステムです。
前述の太陽光発電付き蓄電池システムは住宅の蓄電池が空になると使えなくなるデメリットがありましたが、トライブリッド方式なら一時的に足りない電力を電気自動車から供給することができます。
住宅用蓄電池の容量は消防法の関係もありせいぜい16kWhクラスが限界ですが、日本で購入できるEV / PHEV車の蓄電池は40kWh以上のものが搭載されています。
3人世帯の消費電力量は1日平均で12.2kWh(総務省の統計)ですので、普通に使っていてもEV車の蓄電池だけで3〜4日生活できる計算です。
大規模災害による1週間以上の停電に対しても安定的に電力が供給できるポテンシャルがあるので、現時点で最高の備えを目指すなら太陽光+蓄電池+電気自動車の組み合わせが良いでしょう。
一方、2024年現在でV2Hに対応している電気自動車の種類が限られるのと、トライブリッド対応のパワコンを扱っているメーカーも多くないので、システムを導入するハードルが高いです。
ちなみに初期費用もダントツで高いから、安心のためのお金なら惜しくない!って人はぜひ検討してみてね。
太陽光発電付き蓄電池システムを導入するメリット
メリット1:停電になっても電力が使える
この記事を読んでいる方の大部分はペット飼育者だと思うので、停電になっても電力が使えることが重要なのではないでしょうか?
太陽光パネル付き蓄電池システムを導入すれば、仮に災害などで停電期間が長引いても自家発電だけで復旧まで乗り切ることができるかもしれません。
さすがに停電中にエアコンを稼働すると1日で電力を使い切ってしまうかもしれませんが、10W程度のパネルヒーター数枚なら復旧までの数日間は余裕で耐えられます。
生体を動きを制限する容器に移動してまとめて保温すれば、より長い期間生存できる可能性があります。(保温しすぎも体力消耗のリスクがありますので適度に)
ちなみに爬虫類の飼育にどれくらいの電力が必要かは以下の記事でまとめていますので、是非一読ください。
爬虫類といえば暖かい環境を維持していることが重要なイメージがあるかもしれませんが、生存率的に言えば夏場の対策の方が重要です。
例えば冬場に数時間だけ10℃前後になる程度なら耐えてくれることも多いですが、逆に熱中症になると10分程度で死亡する可能性があります。
蓄電池システムを導入すれば夏場のオーバーヒート対策としても、保冷剤以外に通気性の良いところで扇風機(消費電力10〜50W)を稼働させることができるので、生存率がグッと上がります。
停電時の詳しい対策方法は冨水明さんの災害時の爬虫類マニュアル(外部サイト)に載っているよ。
メリット2:日常生活で電気代を抑制できる
太陽光パネル付き蓄電池システムを導入すれば、普段の電気代が安くなります。
晴れた日のお昼、出かけている間に太陽光発電で電力を貯めておき、帰ってきた夕方から就寝までにかけて、貯めておいた電力を使って生活することができます。
また仮に電力を使い切っても夜寝ている間に価格の安い深夜電力を蓄電池に貯めてくれるので、総合的に電気代を抑える効果があります。
電力を上手にやりくりできる人なら電気代を基本料金しか支払わないような生活ができるかもしれません。
機種と設定によっては深夜電力を100%貯めておくような使い方もできるから、次の日が曇りってわかっているならさらにお得にできるかもね。
太陽光発電付き蓄電池システムを導入するデメリット
デメリット1:導入するコストが高い
住宅に関わる設備全般に言えることですが、初期費用がめちゃめちゃ高いです。
太陽光パネルの取り付けからEVスタンドまで全部最初から構築するとざっくり見積もって300〜400万円近くかかります。
太陽光パネル + 取り付け用の架台:100万円前後
蓄電池 + パワコン:150〜180万円
V2H対応のEVスタンド:60〜80万円
上記の工事費:20〜50万円
仮に400万円というと、電気自動車が1台、爬虫類飼育者ならアルマジロトカゲ(80万円前後)が複数匹買えてしまうぐらいのインパクトです。
オール電化の3〜4人家族の電気代が年間20万円ぐらいだとすると、単純計算で20年分の電気代を先払いするイメージです。
電気代をお得にする目的で導入するのは割に合わないと思った方が良いでしょう。
「月々の電気代が今よりお安くなりますよ!」「しかも停電の時も電気が使えるんです!」と言って意識を「高いけどお得で安心な商品」にするのはセールスマンの常套手段だよ。
デメリット2:導入後もメンテナンスが必要
設備の保証期間としては太陽光パネルで10〜30年、パワコンで10〜20年が一般的です(保証期間はメーカーによって異なります)。
しかしその間に100%の能力が保証されるというわけではなく、太陽光パネルやパワコン、蓄電池がそれぞれで劣化して性能が低下していきますので、15年後には当初の半分〜7割程度しか電力を貯められない、なんて可能性もあります。
また屋根に置いた太陽光パネルは台風の時に飛んできた物がぶつかって破損するリスクがありますし、1階部分に置かれた蓄電池は津波や豪雨で水没したら2度と使用できません。
これらの設備寿命が過ぎて交換するとなった場合、パワコンは15年も経てば全然違う製品ラインナップになっていて、自社製品といえども互換性があるとは限りませんので、最悪の場合、1から工事をやり直す可能性もあります。
もちろん古くなった設備はiPhoneのように下取りで売れるわけでもなく廃棄されますので廃棄料も工事費用に乗っかります。
設備導入するということは維持するにも廃棄するにもお金が必要なのです。
オススメしてくる人は売ったら終わりだから、このへんの認識は消費者側がしっかり持っておこうね。
蓄電池システムを検討するタイミング
ここからは本格的に導入を考えている人向けに、もう少し背景から深掘りして本当に導入に値するかどうかを検討してみましょう。
オススメタイミング1:注文住宅を購入する時
結婚して引っ越すから、子供が生まれるから、子供が小学校に入学する前に・・・など、人生のイベントをきっかけにマンションや一戸建ての購入を検討される方は多いでしょう。
戸建て注文住宅の場合は設備の自由度が非常に高く、太陽光発電 / 蓄電池システムの話が出てくることもあるかと思います。
結論として、住宅着工時に蓄電池システムを入れるのは良いタイミングだと思います。
理由は以下の3点です。
- 蓄電池システムの導入価格が、金利の安い住宅ローンに組み込める
- 最初から蓄電池システムを前提とした設計と施工がされる
- システム導入の値引きが効く(可能性がある)
蓄電池のシステムを現金一括で買うなら別ですが、一般市民がローンで買うなら住宅ローンの方が比較的金利が少ない傾向にあります(2024年現在で0.3〜1%)。
リフォームローンでも金利が2%前後なので、同じローンなら住宅ローン1択です。
また住宅の屋根の耐荷重や蓄電池の設置場所、内部の配線も最初から取り付ける前提で家を設計しておけば、後から取り付けするよりトラブルが発生しにくいです。
工務店やハウスメーカーの場合、すでに住宅本体の価格から結構な利益を取れてますので、設備の1部である太陽光パネルや蓄電池に関しては結構割引が効いたりするケースがあります(場合によってはハウスメーカーの仕入れ原価に近くなることも)。
逆に業者によっては内訳がわからないようにしてめちゃめちゃふっかけてくるケースもあるので、よくよく注意して交渉をしてください。
購入タイミングが良いのと金利が比較的お得ってだけで、総合的にお得とは言ってないよ。
オススメタイミング2:ローンを借り換える時
住宅ローンで家を購入する場合、5年ルール(金利の変動による月々返済額の急上昇を抑えるルール)を採用している金融機関で借りることが多いと思います。
住宅購入当初から5年経過後は125%ルール(月々返済額が125%上限でしか上がらないルール)になるので、5年ルールが切れたタイミングでもっと金利の安いネット銀行などにローンの借換をしたいと考える人はいるでしょう。
その借換の際にリフォームを行うことで、リフォームにかかる費用を住宅ローンに上乗せし、リフォームローンより金利を抑える方法があります。
- 蓄電池システムの導入価格が、金利の安い住宅ローンに組み込める
- リフォームなのに団体信用保険の適用範囲になる
- 蓄電池システムの相見積もりができる
ローンの借り換えは借換手数料を引いて100万円以上の効果があれば検討されると思いますので、
あぁ〜、蓄電池の導入費用に200万円かかるけど、借換で総支払額が100万円浮くから、実質100万円かぁ〜
という心理的なお得感もあり、導入するには良いタイミングなると思います。
とは言っても、そもそも今の銀行で組んだ住宅ローン金利が十分に低いと総支払額の差がなく、借換すると大損になる可能性があります。
事前にモゲチェックといったローンの一括比較サイトでローンを借換したときの効果を調べておくことをオススメします。
仮にローン借換の効果が薄くても、他の銀行金利を材料に今の銀行の金利交渉もできるよ。
最初に「借換の検討をしている」と伝えようね。(実際に借り換えるとは言っていないので、借り換えなくてもよい)
オススメタイミング3:FIT期間が終了した時
すでに太陽光パネルを導入している方も、他の人よりややお得に蓄電池を導入できる可能性があります。
2015年前後に太陽光パネルを導入した人は、FIT制度により売電価格が1kWhあたり30円以上になっていると思います。
2024年現在の電気代が1kWhあたり平均27円ぐらいなので、年間の発電量と消費量が同じぐらいなら売電により電気代がトントン、もしくはちょっとプラスになっている感じでしょうか。
これがFIT期間の10年が経過すると、売電価格がこれまでよりかなり減る(2024年現在の情報だと大体6円ぐらい)ことになります。
これなら発電した電気を売るより自分で使ったほうがお得じゃん!
と考える人は蓄電池を導入する良いタイミングかもしれません。
- 売電によるメリットを10年間で最大限受け取っている
- 太陽光パネルの寿命(25〜30年)と蓄電池のパワコンの寿命(15〜20年)がほぼ一致するので、ギリギリまで無駄なく使い潰せる
- 今の太陽光発電システムのパワコンを流用できる可能性がある
金銭的な優位性が少なく「もったいない」という面が強いので、先の住宅購入やローン借換よりオススメはできませんが、今ある設備をさらに活かすという点では検討できると思います。
太陽光発電のパワコンを流用できるなら結構お安く導入できるけど、相性問題もあるから専門業者に要相談かな。
オススメタイミング4:災害対策を意識した時
大型台風のリスクの高い地域に住んでいる方や南海トラフなどの首都直下型地震の影響範囲に住まれている方は、何か自然災害のニュースがあるたびに「もし被災したらどうしよう・・」と考えると思います。
もしこの記事を読んでいるあなたが火災保険だけでなく、追加で地震保険に加入している、または加入を検討している場合は蓄電池の導入メリットを感じやすい層でしょう。
また寒冷地や南の離島など、停電時にペットの保温や保冷ができないと詰む可能性がある地域に住んでいる方は、ペットの命を守る観点で導入を検討しても良いと思います。
安心を買うためなので金銭面で折り合いがつけやすいけど、お財布の紐がガバガバにならないようには注意かな。
住宅用蓄電池システムの相場
蓄電池+パワコン:10kWh前後で150〜180万円
「蓄電池買いませんか?」と営業された場合の蓄電池システムは250万円超え、
「蓄電池買おうかな?」で自分で調べた場合の蓄電池システムは200万円以下です。
一応適当な数字じゃないことを示すために経済産業省が公開している相場のデータからも持ってくると、蓄電システムの相場は14.0万円/kWh、工事費込みで18.7万円 / kWhです。
相場は蓄電池容量が大きいほど安くなる傾向にあり、5kWh未満なら14.9万円/kWh、10kWh以上なら13.1万円/kWhです。
一般のご家庭の屋根の上に乗る太陽光パネル設置数を考えると12kWhぐらいが上限目安なので、計算上は200万円超えることは珍しいイメージです。
国内家庭用蓄電システムの価格を推計したところ、工事費を除く蓄電システム価格の総額は14.0万円/kWh程度となった
引用元:第4回 定置用蓄電システム普及拡大検討会 2021年2月2日 資料4(経済産業省HP)
もちろんこれは蓄電池の性能や取り付け状況など、個別案件の変動は加味されていませんので一概には言えませんが、10kWh前後の蓄電システムで250万円(工事費込)を超える見積もりを出されたらちょっと高いと思ってください。
このあたりの高い価格帯を出してくるのは電話勧誘、訪問販売、工務店やハウスメーカーです。
最安は蓄電池メーカーから直接仕入れて自分でDIY取り付けることですが、現実的に業者でもない限りはそんなことはできない(たぶん電気工事の資格や設備申請ができない)ので、基本的には信頼できる代理店を探すところから始めましょう。
実際は価格が高くても品質面とかで若干の違いはあるんだけど、蓄電池は代理店じゃなくてメーカーのだし、工事は現場の人の技量次第だからね・・・
太陽光パネル:5kWh前後で80〜120万円
太陽光パネルを取り付ける場合の価格はざっくり100万円前後です。
これに近い数字は住宅に興味のある方ならなんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか?
こちらも経済産業省で公開しているデータがあったので持ってくると、パネルと架台セットで17.7万円/kWh、パワコンと工事費も込み込みで28.8万円です。
新築で導入する方の工事費は住宅購入価格にまとめられていることがあるので除外して、5kWhの太陽光パネルと設置する架台、単機能パワコン(約20万円)の3項目で計算すると108.5万円です。まぁまぁ近い価格になりましたね。
新築案件について、設置年別に見ると、2023年設置の平均値は28.8万円/kW(中央値28.8万円/kW)と なり、2022年設置より1.9万円/kW(6.9%)、2021年設置より1.7万円/kW(6.1%)増加した。平均値の 内訳は、太陽光パネルが約51%、工事費が約26%を占める。
引用元:第91回 調達価格等算定委員会 2023年12月26日 資料1(経済産業省HP)
最近は売電価格が下がりまくって節約効果が薄れてきているからか、太陽光発電だけでの勧誘は縮小気味ですが、勧誘系の業者は3〜5割り増しぐらいで乗せてきます。
2024年の売電価格は16円/kWhで、年間5〜7万円の売電料が得られる見込みですが、過去に言われていた「10年で元が取れる」はほぼあり得ない状況になってきました。
少なくとも節約目的で太陽光発電だけ導入するメリットは皆無と言っても良いので、もし誰かにオススメされたら、導入しないか、蓄電池も込みで導入するかの2択で検討ください。
当時の工事費はわからないけど、元取れるケースってFIT開始当初から導入していた人たちぐらいじゃない?
(2019年に駐車場の屋根に導入した業者さんでギリギリ黒字になる見込みの収支のようです)
設置や配線にかかる工事費:20〜50万円
工事費は人の技量や個別の施工難易度に関わる費用なのでピンキリです。
蓄電池の容量が大きいから、パネルの容量が大きいから・・・といって比例して上がるわけではなく、ベテランの業者さんが入ったり、住宅の配線難易度によって大きく変化します。
蓄電池と太陽光パネルが全て込み込みなら20〜30万円ぐらいの感覚ですが、基礎に穴を空けて配管をいじるようなケースだと高額になる可能性があります。
訪問販売やハウスメーカー関係なら「万が一、お見積りした額より工事費がかかってしまう場合はこちらで吸収します」と言ってくると思いますので、後で高額な工事費を請求されることはないでしょう。(元々の利益額が大きいので業者側で十分に吸収できます)
レアケースかもしれませんが、高い工事費を請求して粗悪な業者に工事させるなんてこともあり得ますのでよくよく注意しましょう。
工務店やハウスメーカーはブランドイメージや保証関係もあるので、その点、意味のわからない業者に当たる確率は低めの印象かな(絶対ではないけど)。
蓄電池システムを購入する際に気を付けること
注意点1:訪問販売&ハウスメーカー経由だと割高になる
蓄電池システムを購入する場合は、誰から買うのかを気にしてください。
訪問販売はエリアに分けて営業マンを配置し、人海戦術的に契約を取りにいきます。このため、営業マンを業務委託として外部から雇っているケースがあり、お見積りの価格にはその委託費(または人件費)が上乗せされています。
工務店やハウスメーカーはやや異なりますが、すでに自社のお客を囲い込んでいるため、『安心』と『信頼』の2つで強気価格を出してきます。
地域によって購入できるルートは様々ですが、間に業者を仲介するほど価格が高くなる傾向があるため、できるだけシステムメーカーに近い業者に相談しましょう。
狙い所はメーカー系列の代理店など1次卸そのものか、1次卸に近い代理店です。
メーカー系列の代理店がそもそも個人とやりとりしているかは微妙なところ・・・
あと地域密着系は色々ありすぎてどこが一番良い!ってのが言えないのよね・・・
注意点2:相見積もりをする(合計2〜3社)
蓄電池システムを導入する際は絶対に相見積もりをしてください。
これから導入を考える人はもちろんのこと、もしすでにお願いする会社が決まっていた方も相見積もりは必須です。
例えばこれが注文住宅や新車なら、各メーカーで唯一な点もあるので比較がしにくいですが、蓄電池システムはメーカーが同じならどこから買っても同じ性能です。
あえて差別化するなら業者さんの信頼度の違いになりますが、その信頼度の大部分は施工する現場の方の技術力に依存します。
もし相見積をしないと相場がわからないので値下げ交渉がしにくいだけでなく、その唯一の差別化要素である信頼度に自分がいくら払っているのか、と疑問に思うこともありません。
相見積をすることで相場がわかり、お金の差がなぜ生まれるのか?という疑問を持てます。
「施工実績を積み重ねてきました」「ウチは良い業者を入れています」「メーカーに近い位置なので仲介料が少ないです」など、大切なお金を払う理由を明確にしてから買い物をするようにしましょう。
普段の買い物は価格コムやAmazon、メルカリなんかを駆使するのに、なぜか高額になると値段の比較しなくなってくるのはあるあるだよね。
注意点3:全負荷タイプのシステムを選ぶ
ペットを飼育しているなら全負荷タイプ(200V対応)一択です。
蓄電池システムは全負荷と特定負荷対応の2種類があり、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。
全負荷(200V対応) | 特定負荷 | |
---|---|---|
メリット | ・全部屋で電源が使える ・エアコンも使える(自動復旧前提) | ・価格が安い ・本体が省スペース |
デメリット | ・価格が高い | ・特定の部屋でしか電源が使えない |
この記事はペットがいるご家庭向けに書いているので、どうせ買うなら停電時にどの部屋も電気が使える全負荷タイプをオススメします。
理由は1点で、ペットを飼育している部屋は年月が経つと生活スタイルの変化で変わる可能性があるからです。
「今までリビングで飼育していたけど、子供が産まれたので自室に移動した」や「腰を悪くしたので1Fに移動」、「子供が自立したので飼育部屋にした」など、自宅の中での引越しは普通にあり得ることです。
実際、私の飼育環境はリビング→自室になったよ。
注意点3:電気自動車に乗っていないならトライブリッドは選ばない
世間では電気自動車を流行らせようとしている風潮があり、蓄電池システムもそれに合わせて技術開発が進んでいます。
トライブリッド式のパワコンは太陽光パネル+蓄電池+電気自動車全てを繋ぐことができる超ハイスペックなパワコンですが、そもそも電気自動車を乗っていない人はトライブリット式にする意味がありません。
え〜・・・だっていつか電気自動車を購入するかもしれないし、電気自動車のバッテリーから家に蓄電できるのって、なんかハイテクじゃん?
と検討している場合は強く否定しませんが、高確率で後悔する可能性が高いのでオススメはしません。
理由は以下の3点です。
- 蓄電池システムとは別にV2H対応のEVスタンドが必要になる
- V2H対応の車両を選ぶ必要がある(車の種類が制限される)
- V2H対応にする分、ハイブリッド式より高額
停電の対策のためだけにEVスタンドと車両の候補を制限される上、現在は自動車のコネクタの規格が定まっていない状況なので、例えば5年後にEV車両を買おうとしたら持っているEVスタンドに対応する車種がなかった・・・なんてこともあり得ます。
V2Hシステムは非常時に車の大容量バッテリーが使える点で魅力的ですが、そもそも蓄電池で補っているので、上乗せ分のために100万円近くの差額を払う価値はないと思います。
ちなみにEVスタンドを立てないでトライブリッドパワコンを設置する場合、将来的にEVスタンドを立てるときにもう一回工事費を支払う必要があるよ。
蓄電池システムのよくある勘違い
勘違い1:蓄電池があるから停電にならない
蓄電池を導入しているお客さんは、停電で周りが真っ暗な中でも明かりがついていましたよ。
こんなセールストークを聞かされて、『蓄電池を入れる=停電にならない』と勘違いされている方も多いのではないでしょうか?
例えばペットを飼育している方の中でエアコン管理されている人はいるとしましょう。
蓄電システムにすれば停電になってもエアコンが使えて、ペットたちが凍えたり熱中症になることはないから安心だよね!
『蓄電システムにすれば停電になってもエアコンが使える』は蓄電池システムを検討される方がよく陥る勘違いです。
実際は、『エアコンのコンセントに給電できる蓄電池を導入していて、かつエアコンに自己復旧機能がついていれば、エアコンが切れた後も再度稼働する』です。
最新の蓄電池システムは、停電になってから数秒で自動的に自立運転モードに切り替わり、蓄電池のみで住宅内の電力を供給できるようになります。
この運転モードが切り替わるまでの数秒間は家の中が一瞬だけ停電している状態になります。
停電時は切り替え期間中にエアコンの電源が一度停止するので、もし復旧機能がついていないエアコンを使っている場合、再度手動でスイッチを押さないと稼働しません。
なので、もし自己復旧機能がないエアコンを使っていて、外出中に停電になった場合、帰宅してエアコンを再起動するまでペット達が危険にさらされることになります。
普段エアコンで温度管理をしている人や、その他の保温器具を使っている人は、自己復旧機能がついているかしっかり確認しましょう。
蓄電池の導入に関係なく、ペット用にエアコン導入する場合は自己復旧昨日の有無は確認しておきたいね。
勘違い2:⚫︎⚫︎年使えば導入費用の元が取れる
蓄電池システムを入れたら何年で元が取れるとは考えない方が良いです。
電話勧誘や訪問販売で営業を受けている方は、「まずは無料の電力シミュレーションを!」という文言からスタートしているのではないでしょうか。
電力シミュレーションといってもそんなに難しいものではなく、現在の電力の使用実績から導入する太陽光パネルと蓄電池の容量を提示するだけなのですが、この手の勧誘はお決まりの営業トークがあります。
御宅の年間の電力消費量だとこれぐらいの太陽光パネルを置いて、蓄電池の容量をこれぐらいにすると、自家発電で年間これぐらいの電力が発電できるので電気代のメリットがありますよ。
ここ数年はエネルギー価格が高騰していて、各電力会社で電気代の値上げが相次いでいます。今後も値上がりが続く可能性がありますので、ここ最近、家庭で使う電力は家庭で発電するよう、政府も力を入れています。
この文章をじっくり読んでいる人の中には似たようなことを言われたのではないでしょうか?
言っている事は全部事実ですが、同じ人にこう聞いてみてください。
「それは蓄電池システムの導入費も入れると、トータルでいつ元が取れますか?」
「10年です」「20年です」とはハッキリ答えないと思います。営業の人ができるのはシミュレーションで出てきた直近1年間の電気代と理想の発電電力を提示するだけです。
実際の蓄電池システムは劣化したり破損したりといったリスクを抱えることになるので、思ったとおりに元が取れる可能性は低いです。
その導入費で全世界株で長期投資でもしていた方が勝率は高いでしょう。
私だったら、たぶんなんやかんや言った後に「トータルで元が取れる時期は一般的に20年ぐらいと言われています。その間の⚫︎⚫︎%の確率で大型地震がくると出ていますので、個人的には停電時の安心料も含めて元が取れると思います。」って話を逸らすかな。
まとめ:蓄電池はあくまで災害用として考える
といった感じで、今回は太陽光発電+蓄電システムを検討されている方向けに、システムを導入するメリット・デメリットや、検討するときに気を付けることをまとめてみました。
- 太陽光発電付き蓄電池システムなら電力の自給自足ができるので、数日の停電にも耐えられるかも?
- システム導入のタイミングは新築 / ローンの借換と同時が住宅ローン金利が使えるのでお得になりやすい
- 蓄電機システム自体の価格は150〜180万円ほど。初期費用が高いので最初から元が取れるとは思わない方が良い
- 電話勧誘 / 訪問販売 / 工務店 / ハウスメーカーは結構高額な価格になる場合もあるので注意
- 蓄電池にしたからといって停電にならないわけではない。ペットに使っている電気設備に復旧機能があるか確認を!
さて、ここまでめちゃめちゃ解説していますが、ペットのためという理由だけで蓄電池システムを導入することはオススメしていません。
理由は導入効果に対して費用が高額という点もありますが、そもそもペットのために導入すると言っても、
実際に停電になった時、限りある電力をペットのためにフル稼働で使えますか?
という疑問はあります。
私の個人的な意見として、ペットの生活は人間の生活が成り立っている状態で保証されるもので、ペットのために人間の生活を犠牲にするのは何か違うかな?と思います。
それでもあえて蓄電池システムの導入を検討できる理由を挙げるなら以下の5点でしょうか。
- ペットの販売や繁殖が生活の基盤になっている(ブリーダーなど)
- ペットの生活は人間の生活より優先できる
- 人間だけだと電力を余らせる生活スタイルである(ひとり暮らしなど)
- 単に人間用に、災害時の停電対策として導入を検討している
蓄電池は導入しないけど、それでもペットのために停電の対策はしたいわ・・・
1つの案として、アウトドア用途などで使われるポータブル電源は検討できます。
持ち運びできるぐらいの容量しかないので非常時に長時間稼働できるのはパネルヒーター数枚ぐらいですが、うまく活用すれば最低限ペットの命をつなぐレベルの温度環境は実現できると思います。
ポータブル電源は本体価格が数万円〜20万円で工事も不要なのでコスパも良いですし、ペット専用として確保している電源なので日常生活との切り分けもしやすいです。
1台で運用しても良いですが、蓄電池システムの導入費より格段に安いので、複数買って5年ごとに買い替えてもお釣りがきます。
人間の生活とペットの生活、それぞれでうまくバランスを取りながら充実した飼育生活を送っていきたいですね。
ちなみに今回の記事を書くにあたって業界の人にヒアリングしまくったので、業者ではなくユーザーの視点で多少の導入の相談はできると思うよ。
もし気になる人は以下のSNSか、ブログの問い合わせフォームからお気軽に連絡してみてね。